お気に入りの書籍紹介『進化するアカデミア』
こんにちは、Gaji-Labo 山岸です。Gaji-Labo Advent Calendar 2014、2日目のエントリです。
本日ご紹介するのは、『進化するアカデミア 「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来』。「創造性を加速させる仕組みを研究対象にしている研究者・江渡さんを中心に、数人の著者によって書かれている本です。
この本で登場するニコニコ学会βについては、ご存知の方も多いと思います。「立場や領域を超えて人をつなぐニコニコ学会β」というコンセプトに惹かれて、個人的にも 第5回ニコニコ学会βシンポジウムの裏方お手伝い などをさせていただいたりしました。
印象的な箇所の引用
山岸が印象的だと思う部分の引用を紹介したいと思います。
ユーザーが「明示的に」主役として加わる
よって、この学会ではユーザー、つまり技術開発も含めた広義の「コンテンツ」をつくるクリエイターと視聴者こそが主役として活躍して欲しいと願っています。なぜなら、その人たちがいなかったらニコニコ動画はただの空箱なのですから。
通常の学会という場は、研究者とビジネスの現場の方々、つまり、アカデミアと産業界が主役として活躍する場です。でもニコニコ学会βでは、そこにユーザーが「明示的に」主役として加わるところが本質的な違いです。ユーザーとアカデミアと産業界が、互いに対等に議論しながら新たな価値を生み出していけるような場。それこそが、私が理想的だと考えるニコニコ学会βの姿です。
研究的なマインドがそこにある
一方で、大田区や東大阪の町工場のおじさんたちは、まったくオシャレ感はなく、非常に経験主義的でそのノウハウにロジックが無いように見えますが、彼らのクリエイションはすさまじい反復作業の上で常に成り立っており、いわば彼らは常に実験をしているのです。つまり研究的なマインドがそこにあるわけです。
誰もが研究者である
僕たちニコニコ学会βには、「誰もが研究者である」という根本的な思想がある。
研究者は職業ではなく、ライフスタイル
そしてファラデーがそうであったように、研究者は職業ではなく、ライフスタイルだと私は思います。仕事のために研究するのでなく、真理を追求するため、そして夢を実現するために研究し、社会に対して広く伝えてゆくことが大切だと信じています。 研究者は9時5時のサラリーマンではなく、野生であってこそ、真に研究者たりえるのではないでしょうか。少なくとも私はそれを信念として研究をしています。
人間と科学技術の断絶
科学や技術を嫌いな人たちが出てきた背景に、人間と科学技術の断絶があると思います。僕らが普段使っているパソコンやスマートフォンは複雑すぎて、仕組みの説明もできないし、どうすればこれ以上良くなるのかわからない。進化した科学は、多くの人にとって「自分ごと」ではなくなってしまったのかもしれません。そこに今の科学のひとつの限界があるのかもしれません。でも、だからといって科学と反対の方向に向かっても、そこに未来はないと思うのです。
無くなったときに初めて、無くなったことに気づく
シンポジウムを開催する過程で、日本ではすばらしい研究が草の根からぽこぽこと生まれ続けているのだと、実感することができた。そのすばらしさは、水の中を泳ぐ魚が普段は水を意識しないように、当たり前のものとして存在している。でも、この環境がほんとうに続くのかな、と思っている。すばらしいものが存在することを当たり前のことだと思っていると、いつの間にか無くなってしまうことがよくある。そして、無くなったときに初めて、無くなったことに気づくのだ。
立場や領域は壁ではない
いくつか挙げた引用の中でどこかピンとくるものがあったら、読むことをおすすめします。著者それぞれの語る言葉で感じてほしいので、山岸の感想や印象はあえて控えたままで終わりにします。
立場や領域を超えたいという姿勢はニコニコ学会βだけが持つものではないと思います。自分ならどうするか。どうつながりたいのか。そんなことを考えている人に読んでほしいです。