課題図書紹介『トラクション ―スタートアップが顧客をつかむ19のチャネル』
こんにちは、コミュニケーションアシスタントの井上です。
以前、Gaji-Labo Advent Calendarと称してメンバーが書籍や技術、ツールを紹介をしていたことがありました。メンバーが増えた今年も、是非また挑戦してみたいなと思っています。
今回の記事では、Gaji-Laboにジョインした時、はじめて課題図書として渡された書籍『トラクション ―スタートアップが顧客をつかむ19のチャネル』を紹介します。 元々は2014年に海外で出版された本で、本書は2015年に和田祐一郎氏によって翻訳されたものです。今回は気になったワードや事例に絞って紹介していきます。
“トラクション”とは?
本書はユーザー追跡をしないことで話題となった検索エンジン「DuckDuckGo」の創業者ガブリエル・ワインバーグ氏と、二つのスタートアップ企業の立ち上げに携わり、Exceptional Cloud Servicesの成長マネジメント担当でもあるジャスティン・メアーズ氏によって執筆されました。彼らは4年かけて、40人以上ものスタートアップ創業者へのインタビューや企業調査を行い、スタートアップ企業が成功するにあたって19種類のチャネルからトラクションを得ていることを発見しました。
“トラクション”について、彼らは本書のはじめに以下のように定義しています。
トラクションとは、成長する兆しであり、ビジネスにおける重要指標を計測することで明らかになるものです。モバイルアプリの場合、その指標はアプリのダウンロード数であり、検索エンジンであれば、検索数です。(中略)コンシューマ向けのアプリならば、日々のアクティブユーザ数の著しい造花がそれにあたります。
トラクションを獲得することは、即ち企業の成長曲線を右肩上がりにどんどん伸ばしていくことに他なりません。成功する企業がトラクションを獲得するためにそれぞれ選択しているという19種類にもおよぶチャネルを、本書では1つずつ、スタートアップ創業者達と企業の例を挙げながら詳細に解説しています。
“ブルズアイ・フレームワーク”を作成しよう
とはいえ、19種類ものチャネルの中から本当に必要なチャネルを探し出すことは難しいと思います。そこで各々のチャネルの解説に移る前に、本書では“ブルズアイ・フレームワーク”について解説しています。いくつかの手順に従って、19種類のチャネルの中から自分達に最適であろうチャネルを見つけていく手法なのですが、最適なチャネルが判明するまで以下の手順を反復していきます。
ステップ1:ブレインストーミング
ステップ2:ランク付け
ステップ3:優先順位付け
ステップ4:テスト
ステップ5:リソースの集中
企業の色に合った馴染み深いチャネルだけをテストして失敗するパターンも多いそうで、最初から「このチャネルはうちには合ってなさそう…」と切り捨てるのではなく、まずはステップ1のブレインストーミングで各チャネルへの先入観を捨てることが大切なのだと強く感じました。
“50%ルール”を理解する
また製品やサービスを持ちながら、肝心のトラクションを獲得していないばかりに十分な顧客を集められないケースも十分ありえます。そこで、本書では“50%ルール”を徹底するよう紹介しています。製品やサービスの開発と、トラクションの獲得には同じだけのリソースを当てるべきである、という考えです。Dropboxの例を見てみるとわかりやすいかもしれません。
オンラインストレージを提供するDropboxは、製品開発中にSEMをテストし、それがDropboxの役に立たないことを確認しました。99ドルの製品を売るために、230ドルも使って顧客を獲得していたのです。その後はバイラルマーケティングにリソースを集中させ、製品に「友達紹介プログラム」を組み込みました。それ以来、このプログラムがDropboxの最大の成長エンジンです。
製品開発とトラクションの獲得を同時に行わなければ、リリース後に得られたフィードバックを元に再開発する追加の時間が生まれてしまいます。一見手間のかかる作業ではありますが、長い目で見た時に必ずしも無駄ではないということに気付かされました。
読み終えて
はじめて課題図書として渡された時、最後まできちんと読みきれるかどうか不安でした。 しかし正確な翻訳と読みやすい構成、実際の事例にそったチャネルの解説は非常にわかりやすく、当たり前だけど大切なこと、今まで知らなかったことを一気に吸収するいい機会となりました。
もちろん米国と日本で状況が違っていて実践が困難なチャネルの紹介もあります。ですが、これからスタートアップ企業を立ち上げようとしている方、新事業がなかなか上手くいっていない方にオススメの一冊です。気になった時や行き詰った時やに都度読み返すのが良いでしょう。弊社がリソースを集中するべきチャネルは果たして…?