持続可能性を考えたデザイン戦略が必要だったプロジェクトを振り返る・前編
某コンビニPBの件で、ブランディングの観点やユニバーサルデザインの観点での議論がさかんに行われています。建設的な議論や批評が重ねられていくのはよいことなのではないかと思っています。
SNSなどで様々な言説を拝見しながら、私の中でただただ湧き起こるのは「過去の自分の案件できちんと最適解を出せていたのか」という自問自答です。たくさんの人の意見を見るにつけ、自分はどうだったのか/どうなのかをきちんと振り返って、次回以降よりよい答えを見つけられるように活かしていきたいと感じます。
持続可能性を考えたデザイン戦略が必要だったプロジェクト
最も強く思い出されるのは、福祉施設のデザイン戦略の事例です。最上級の命題は「自主生産品の売上を伸ばし、施設で就労する方々の工賃を上げる」でしたが、デザイン戦略上クリアしなければならない課題はいくつもありました。
あらためて当時どんなことに気を付けてデザインを進めたのかを思い出し、表層的な部分だけではないデザイン戦略の部分に何があったのかを言語化してみます。
長くなるので、前後編に分けて書いていきたいと思います。前編の今回はオペレーションの持続可能性の話が中心です。
「売る」だけが目標ではなかった
その案件では、Gaji-Laboは店舗やオペレーション設計をていねいに行っていらっしゃるおおきな木・加藤さんのパートナーとして、表層的なデザインだけではないエコシステムそのものを一緒に描くところをお手伝いしていました。
福祉施設のプロジェクトを振り返ると、コストの制限とユニバーサルデザインを運用側に適用する必要があるのが難しい点のひとつだったと思います。就業支援の場としてのカフェ兼ショップのオペレーションを回すに当たって、「売る」以外の重要な要素が山ほどありました。
極限までコストをカットして、かつオペレーションを最大限スリム化して、最速で混乱なく必要タスクが完了できるように… とにかくいかに持続的に運用できるか、つまりオペレーションの持続可能性を考えたデザインがとても重要なことでした。
持続可能性を考えたデザイン戦略
オペレーションの持続可能性を考えるということは、どういうことだったのか。店舗やパッケージのデザインを考える際に考慮に入れたポイントを書き出してみます。
オペレーションの持続可能性
まずは店舗や周辺領域のオペレーションがスムーズにいくことを考える必要がありました。オペレーションを組み立てるに当たっての壁はいくつかありましたが、様々な物事のキャパシティを知ることが役に立ちました。
- 人的リソースの量としての許容範囲
- 人的リソースが保持するスキルの許容範囲
- 設備の許容範囲
- 法律の許容範囲
- 安全であるか/リスクがないか
挙げたものの許容範囲を超えないように、どうすればデザインがサポートできるのかを考えました。その結果はパッケージの形や素材にも反映されています。
予算の持続可能性
予算という制限は、どんなプロジェクトにも付きものです。そして予算が潤沢に用意されている福祉施設はめったにないと思います。短期的な視野だけでなく、長期的な目線でも同様に点検し、何ができるのかを洗い出していきました。
- 生産活動を続けるための予算限度
- 販売環境整備のための予算限度
- 人的リソースにかけられる予算限度
- 設備投資・維持のための予算限度
予算の制限を乗り越えるためには、かなり飛躍したアイデアが必要です。予算制限への挑戦は、知恵を絞りに絞って取り組んだ部分です。
販売方法の持続可能性
販売方法についても、特殊事情がある中での最適解を見つけて取り組みました。このポイントはバックヤードでのオペレーションの持続可能性に密接に関わってきます。
- 運用可能な納入経路の模索
- 運用可能な在庫管理の模索
- 消費期限と廃棄リスクの算定
- コンセプトが合う販売方法の選定
こうした内容を洗い出していくと、パッケージのデザインひとつ取ってもオペレーションに影響が出ることがわかってきます。むしろこの部分を抜きにデザインすることは不可能です。
役に立たないデザインになってしまうリスクをていねいに取り除くためには、販売方法の持続可能性をしっかり検討することが大事でした。
(後編の記事に続きます)
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