このボールは誰のもの?プロジェクトを前進させるパスワークを考える(3)


プロジェクトチームの中で飛び交うコミュニケーションをよくボールに例えて表現します。そのパスワークをいかにすればプロジェクトを前に進めることができるかについて、シリーズで記事をお届けしており、この記事が最後となります。

プロジェクト内では網の目のようにコミュニケーションパスが張り巡らされ、常に無数のボールが飛び交っています。それら全てを監視し続けるというのは到底無理な話です。では、わたしたちはどの範囲のボールを把握しておくべきなのでしょうか。

Gaji-Labo はクライアントも含めたチームでプロジェクトを動かします。その原動力となるのはコミュニケーションにおけるパスワーク、そしてボールハンドリングです。この重要性はシリーズの記事の中で繰り返しお話してきました。

今回の記事では、飛び交うボールをどうトラッキングしていくか、チームメンバーはそれらのボールをどう扱うべきなのか、タイトルにもある「このボールは誰のものか」について考えていきます。

渡したボールは誰のもの?

まず、触ったことのあるボールについて考えましょう。自分から他のメンバーにパスしてしまったボールのことはもう忘れてしまって良いでしょうか?

以前の記事でも触れましたが、ボールを投げた先でタスクが止まってしまうということは頻繁に起きます。また、ボールの行った先からヘルプを求める声が飛んでくることもあります。そういった場合にフォローをするのに適任なのは、タスクの内容を把握しているパスを出した自分自身です。自分が関わっているタスクのボールは行く先を「出来る範囲で」トラッキングしておきましょう。

以前わたしが関わったタスクで、自分の担当箇所の作業が完了して他の方にチケット担当者を渡したあと、そこで停滞してしまったことがありました。元々優先度がそこそこ高かったそのタスクは、進行が停滞してしまったことから優先度が「Highest」に指定されてしまいました。

この出来事は、手元から離れたボールを他人事として扱ってはいけないという自戒となっています。

すべてを把握し続けるコストとリスク

しかし、関わったボールの現状を逐一把握しておくべきかというと、必ずしもそういう事でもありません。

ニンゲンの認知能力には限界があり、キャパシティオーバーとなってしまっては自分が抱えているタスク全てが停滞してしまうかもしれません。

自分が今最も注力しなければならないのは、手元を離れているタスクではなく、現在進行系で自分が実際に手を動かしているタスクです。自分の手を離れたボールの観察は、自分が今すべきことの進捗を出したうえで残りのリソースでもって行わなければなりません。

その時に詳細まで把握しようとすると情報過多で全てを処理しきれなくなってしまうこともあるでしょう。物量にもよりますが、多くのタスクが流れているプロジェクトではスイッチングコストに溺れてしまいがちです。

タスクが多いと感じたら、手元にないタスクについては事細かな詳細情報(例えば具体的な実装や仕様、方針など)に強い関心を持つべきではなく、あくまで表層の部分、進行状況の把握ぐらいにとどめておくのが良いでしょう。「スケジュール通りに進行しているか」「トラブルを抱えていないか」が分かれば十分です。詳細な仕様について腰を据えて考えを巡らすのは本来は現在の担当者がすべきことで、もしそこからヘルプが飛んできたら、その時に一緒に悩んで対応し、解決しましょう。

多くのボールを抱えすぎない

手元のタスクの物量にも注意が必要です。

多くのタスクを抱え過ぎれば認知能力の限界を迎えます。自分のタスクには強い関心と注意力を持って臨まなければなりませんが、多くのことに関心を持ち続けると脳のリソースは消費し尽くされてしまうでしょう。

そこで意識したいのは、手元に滞留するボールを出来るだけ減らすことです。あまりに多くのタスクを抱えてしまう前に、ボールを次の担当者に渡して自分の関心をそのタスクから剥がします。以前の記事で述べたようなクイックネスがここでは重要になります。

ボールを渡す先がない場合は、周囲にアラートを出して協力をあおぎましょう。チームメンバーはアラートを察知したら積極的にタスクを剥がしに行きます。ひとりのメンバーにタスクが集中している状態は属人性の観点でも健全ではないので、負荷を分散して正しくボールが流れていくように交通整理をし、メンバー各人が良い感じのバランスでボールを抱える状態を目指すと良いでしょう。

関わりのないボールをどうするか

自分が関わっていないタスクについてはどうでしょうか。

これは可能な範囲で観察しておきたいところです。たまたまスタックしているタスクを見かけて、自分の知見で解消できるかもしれません。アラートを察知できるかもしれません。タスク自体に関わりがなくとも、同じプロジェクト内の話ですから、何かしらの力になることができるはずです。

とはいえ個人が把握出来る範囲には限りがあるので、余裕がある時にベストエフォートで行っていくのが良いでしょう。

「このボールは誰のもの?」という問いに対しては、「誰のものかはどうでもいい」と答えておきます。「ボールはみんなのもの」です。

最後に

これまでの記事内容は、わたしがプロジェクトで立ち振る舞っている中で考え、悩んでいることを言語化して書き連ねたものです。自戒もまじえており、当たり前のことを再確認しただけと思われるかもしれません。

しかし、理屈ではわかっていても実践するとなると様々な要因で思うようにいかないものですし、必ずしもこれが正解というわけではありません。現場で試してはじめて分かることも多くあるでしょう。より良いアイデアがあれば取り入れ、改善点あれば修正し、磨き上げていきます。

Gaji-Laboはチームワークを提供する会社です。わたしたちは、チームワークがより高い価値を生み出せるようなコミュニケーションをデザインしていきます。

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投稿者 Oikawa Hisashi

フロントエンドエンジニア。モダンなJavaScript開発に関心があります。 デザインからバックエンドまで網羅的にこなすマルチデザイナーとして長く活動してきた経験を活かして、これから関わる様々なものをデザインしていきたいです。チームもコミュニケーションもデザインするもの。ライフワークはピアノと水泳。